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第5話-9
「色々話してくれてありがとう……そろそろ晩ご飯でも食べようか」
「俺、泊めてくれたお礼に何か作りましょうか?」
「材料が無いから……デリバリーにしよう。ピザかスパゲッティか……」
「両方!」
宿泊料の代わりとして、チャーリーがお金を出してくれる事になった。2人はジャガイモと牛肉が乗ったピザ1枚とミートボールスパゲッティ2人前を頼んだ。2人前。これはチャーリーが言い出した事だ。彼が、2人前のスパゲッティを食べたい、と言ったのだ。注文した店のパスタはとても一人前とは思えないほど量が多いが、その細い体の一体どこに2人前のスパゲッティが入るんだ?
配達が来るまで2人は雑談をすることにした。
しばらく取るに足らない明日には忘れてるような話をしたが、ふと思い立ってウェインはチャーリーに尋ねた。
「そういえば、マシューって人とはどういう関係なんだ?恋人?」
チャーリーは青白い頬をポッと赤く染め「えっと!」と明らかに困惑した。これは面白い。
「恋人……というよりは、俺のお兄さんって感じで……」
「あの人はお前のこと恋人って言ってたけど」
「えっ!!?マシューが!?」
そんな……と初恋を覚えた乙女のように首まで真っ赤になり、分かりやすく視線を泳がせた。そして10秒ほど思案をめぐらせてから「なぜあなたがそんなことをご存知なんですか」とウェインに聞いた。
「そんなこと、とは?」
「マシューが俺のこと、こ、恋人だなんて言ってたこと、です」
「本人がチャーリーさえよければ恋人に……って言ってたから」
「はぁ!?」
確かマシューはそんなことは言っていない。だが解釈としては合ってるだろう。とウェインは適当に話を進めることにした。聞きたいことはある程度は聞けたし、もうボーイズトークでも良いだろう。
「で、ぶっちゃけやってんの?」
「なにをです」
「セックス」
「……………」
「聞いてる?」
「それ、下品だって言われませんか?」
「それくらい友達と話さないの?」
チャーリーは心底嫌そうな表情になり、俺は苦手です、ときっぱり言った。
おれの周りがおかしいのか?とウェインは疑問に思った。付き合っているならそれ相応の事はするだろうに、マシューもチャーリーも関係性を濁す。
「おれたち、友達だろ?」
「友達って、そう言う話までするもんなんですかね……?」
「他の仲いい子とは普段どんな話してんのさ」
「え、ええ……趣味の話、とか……?」
ウェインは濁した言い方が引っかかり、詰めようとしたがそこでチャイムが鳴った。ピザとパスタが届いたのか。ずいぶん早い。
ウェインはチャーリーへの好奇心を抑えつつ、玄関にピザを受け取りに行く。
彼は油断していた。ここ2日は目まぐるしく様々事が起き、そして解決はしていないもののひと息ついていた矢先。
"アレ"は玄関を開けると、家主の許可なくアパートに侵入した。
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