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第6話-3
「巡回にあたっていた魔法使いの話を聞いてみよう」
「そうね。今から会いにいきましょうか。じっとしてるのも性に合わないでしょう」
「その通りだ」
マシューとクリスは立ち上がり、念の為対魔法用の防護服を着て会社の外に出た。この防護服の良いところは銃弾やナイフを防ぐものでは無く魔法の衝撃を和らげるためのものなので、見た目はただの厚手のシャツだということ。悪いところは銃やナイフの物理攻撃は防げない事と、夏に着るのは暑苦しすぎるということ。
「はぁ〜暑い。良い季節だけど」
「全部この服のせいだろう。エリアA担当の魔法使いは?」
「今から連絡を取るわね」
エリアA担当の魔法使いは今年魔法学校を卒業したばかりの新米魔法使いだった。
彼女はクリスを慕い……というより、まるで女神かのように崇めており、薄暗い路地で落ち合ったがその陰鬱さを感じさせない程の目の輝きだった。
効率の悪さを感じ、マシューは単独行動を提案して実行に移した。……自らの実力を過大視しているわけではないが、マシューもクリスも、大抵の攻撃に個人で対応出来るくらいには強い。
マシューはAとは真逆にあるエリアEの魔法使いを尋ねることにした。ここはチャーリーが担当していたエリアでもあるが、彼の他にもう1人常勤の担当者がいる。他より範囲が広く、チャーリーがまだ未成年で正規の魔法使いで無いということもあって2人で1つのエリアを担当しているのだ。
「あいつは、いつ魔法使いだと認められるんだろうな」
マシューの生家により、半ば無理やりこの世界に籍を置くことになったチャーリーの立場はあまり良くない。生まれついての魔法使いでは無いため、上から白い目を向けられたり、近い世代から嫌がらせをされたりする事も多くあった。……できる範囲で、マシューがねじ伏せてきたが。
ほとんどの魔法は代償なしの便利さは無いが、場所と場所を一時的に繋ぐことが出来る魔法だけは代償なしで使うことが出来る数少ない魔法だ。というのも、こういった事件が起こっている地域は至る所に"ワープ地点"が意図的に設置される。この設置はそれ専門の魔法使いがするが、その後魔力を流せば誰でも使用できる。
マシューはエリアEまで一瞬で飛び、そこの20代半ばの魔法使いと会った。
「あれ、マシューさん。今日はチャーリーはお休みですよ」
「いいや、お前に話を聞きに来たんだ。アレに関して、観察出来たことから少しの違和感まで詳しく話してくれ」
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