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第7話-3 *流血表現有り

あろうことか、チャーリーは刃物を一気に引き抜いた。彼は激痛のあまり叫んだが、その声はタオルに吸収された。刃物のおかげで堰き止められていた血がダムのように流れ出る。下に置かれたパサついたタオルはみるみる血を吸い込み、やがて血の量に耐えられなくなり床に漏れ始めた。 ウェインは気を失いそうになり、しゃがみ込んで顔を伏せた。チャーリーと友達になれるかと思ったが、何となく無理な気がしてきた。この男、どう考えても相当おつむが悪いか頭のネジが数本抜けている。 このまま何も見なかったことにしたいが病院送りは必須だ。ウェインは顔を上げ、携帯端末を取り出した。 「おい、病院、行くぞ……」 チャーリーはようやく唾液まみれのタオルを吐き出し、そのまま壁にもたれかかってぐったりした。ウェインは血に塗れた左手は極力見ないようにし、彼の肩をさすった。 「はーーー……はーー……大丈夫です。少し待って……」 「何が大丈夫なんだ?どこをどう見たら大丈夫なんだよ?」 「10、秒だけ、待って……ぐっ……」 チャーリーは突然左手首を強く握った。それみたことか、悪化してるじゃないか!ウェインが避けていた左手を見ると、驚くべき現象が起こっていた。 するすると、まるで皮膚同士をソーイングでもするかのように傷が塞がっていくのだ。筋肉と筋肉、皮膚と皮膚がそれぞれ意思を持った生物かのように番を探し、繋がり、あるべき姿に戻っていく。 「ふぅ、ふぅ……はぁーーー…………痛かった……」 手のひら、手の甲ともに傷口が塞がり、しっかり動くか確認するとチャーリーは携帯端末をウェインに差し出した。 「マシューに、電話をかけてくれますか。アレを捕獲した、って伝えてくださ……俺はマシューが来るまで寝ま……」 チャーリーが床にうつ伏せに倒れ込む寸前でウェインは携帯端末を受け取った。 「チャーリー!おい、チャーリー!」 ウェインは彼の体を揺さぶり、頭に耳を寄せ、息をしているか確認した。 すやすや、すやすやとしっかり眠っている呼吸音が聞こえてきた。 「あーーーーーーもう、なんなんだ……もう……」 その寝息を聞いていると、ウェインは怒りも恐怖感ももはやどうでも良くなってきた。 しゃがんでぽりぽり頭をかき、少しの間ぼうっとした。半分は放心状態のまま、携帯端末の電話履歴からマシューの名前を見つけ、電話をかけた。

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