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第8話-1

明日帰ってこい、と言ったマシューが1週間帰宅できなくなった。上から仕事を催促されているらしく泊まり込みの仕事になったのだ。 チャーリーは拗ねてしまい、良いんです別に、とそっぽを向いた。担当しているエリアの巡回を深夜にしてもらおうと考えたが「未成年なので却下」とのことで、ますます拗ねてしまった。 「リダクナさん泊まりに来てくださいよ」 「夜勤がない日だったら良いよ」 カウンセリングのついでにそうわがままを言うと、リダクナはすんなり受け入れてくれた。彼が夜勤の日は無理言って病院の待合に置いてもらうことになった。1人は嫌いだ。夜や冬も嫌い。淋しいし、辛い事を思い出して泣きそうになるから。 リダクナはチャーリーが幼い頃からカウンセリングを請け負っているため、彼の不安定な性格をよく知っていた。彼の気を逸らすために突拍子もない話題を振ったり、世間話を多くしたり工夫をしてくれた。 「チャー坊、また背伸びた?測ってみなよ」 「服が小さくなってきたんです……」 「あの唐変木に服買ってもらいなよ」 「ええ、もちろん」 気を紛らわせるために背を測ると188センチになっていた。もう身長いらないでしょ?とリダクナに笑われたが、それはチャーリーも同じ意見だ。突然訪れた成長期のおかげですぐに服のサイズは合わなくなるし、魔力の道の影響で体は痛むし……マシューの背を超えた時は嬉しかったが、最近はどこまで伸びるんだろうと恐怖感が勝っている。 1週間。 長い。本当に長く感じる。 マシュー、早く帰ってきて、と夜中何度も泣きそうになった。 「まったくもう、大きな弟だこと!これでも抱っこしてなさい!」 リダクナはチャーリーに大きなぬいぐるみを抱えさせ、そのまま布団の中に押し込んだ。弟が怖がらないように小音でラジオをかけて、部屋の電気も完全には消さないでくれた。 チャーリーはリダクナはお兄さんかお父さんみたいな存在なのかな、と思った。 部屋の中に見知った誰かがいると安心する。寝息や体温や、その人が立てる音を感じると落ち着く。 4日間は彼のおかげで夜穏やかに過ごすことができた。

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