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第8話-9

俺は並、そう言ったが前回も今回もなかなかの量を腹に吸い込んでいる。これ以上身長を伸ばしてどうするんだ?寄付でもするのか?と嫌味を言いたくなる。かなり大口で食べているが、シャツのボタンは今日も一番上まで付けたままだ。 「シャツ、苦しく無いのか?」 「ええ、もう慣れてます。飲み込むコツがあるんですよ、コツが」 「ボタン外せば良いんじゃないか?」 「それは……あはは。これでいけてるなら良いじゃないですか。そうだ、俺驚きましたよ。ウェインさんって俺より年上なんですね」 「おま……失礼なやつだよ、本当に。おれが高校生に見えるか?」 「だって身長俺より低いし……」 「お前と比べたら大抵の人は背が低いよ」 「あはは!」 無理矢理大声で笑っているように聞こえた。その証拠に、目が笑っていない。……落ち着け。気になったらついズカズカ聞いてしまうのはウェインの悪いくせだった。 先週見てしまったタトゥー、それと青い血管のようなもの。それにこの男の生い立ち、魔法のこと。 それらは知らないうちにウェインを魅了していたらしい。しかし、一時の好奇心で関係を崩すような会話はしたくはなかった。あれやこれや包み隠さず話すような間柄でない事くらい、ウェインも分かっていた。 「……そういやさ、お前って結構良いスニーカー履いてるけど好きなの?」 「これですか?いいえ、好きってわけでは……マシューが買ってくるんです。これ、良いスニーカーなんですか?」 「確か良いやつだと……というか靴のサイズいくつ?デカくね?」 「29センチだったかな……」 その後は以前購入したものの開封すらしていないテレビゲームをクローゼットから出してきて遊んだり、冷蔵庫にあったマシューが買ってきたお酒を飲んだりして過ごした。驚いたことに、まあいいや、とチャーリーも酒を飲んだ。飲んだ結果、かなりの下戸だった。 若者特有のどんちゃん騒ぎをして夜も更けてきた頃、べろべろに酔ったチャーリーがウェインに絡んだ。文字通り、絡みついてきた。 「ウェインさんはね!なぁんで俺と仲良くしてくれてるんですかね!?」 「酔ってんな〜」 「答えてくださいよ!」 酔っても丁寧な口調を崩さないあたり、誰に対してもその話し方なんだろうな。ただ腕を絡ませてきたりもたれかかってきたり、これをマシューに見られたら一巻の終わりな気がしてならない。 「チャーリーくん、ね、君あんまり誰かとお酒は飲まない方が良いかもね」 「今更未成年飲酒を咎めるんですか?もう年齢なんて誤差みたいなもんでしょう!」 「違うよぉ〜……」 首まで真っ赤で暑苦しそうなのにシャツのボタンは絶対に緩めない。ここまでくると筋金入りだ。ウェインは諦めて「もう寝ましょうね〜。ベッドはどこですか〜?」とおちょくるようにチャーリーを抱えた。抱えた時、背中に腕を回した時、通常、背中に存在しない凹凸に触れた。 「……」 おそらく、あの青い血管のようなものだろう。少し強めに押してみる。抵抗があった。見かけによらずしっかりした作りになっているらしい……。「触らないで!」 チャーリーの顔を見る。彼はさきほどまでの酔っ払いが嘘かのように真っ青になっていた。 「ごめんなさい、だけど、あまり触らないでください。確かめないで……」 「すまない、そんなつもりは……。ああ、ごめん……」 「いえ………………うっ!?」 「ええ、うわっ!!吐くな吐くな!待て待て!」 口を押さえろ!ウェインはおろおろしながらチャーリーをトイレに押し込んだ。

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