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第8話-10

吐き出した後、半ばチャーリーを引きずるように寝室に入る。 寝室にはベッドが2つあった……どちらがチャーリーの物かは何となく分かった。ベッドは2つとも綺麗に整えられているが、片方だけ大量のぬいぐるみが置かれていた。こっちだな?と大男を持って行こうとすると彼は「ちがいます……あっちにしてください……」 「マシューは、知らない人の匂いがベッドにつくの、嫌がるんです……」 「そうか。ほら、早く寝ろ」 「うっ、うっ……」 「泣くなよ……」 「ごめんなさいい……俺、こんなつもりじゃ……」 背の高い大人がめそめそしている。酔っていることもあるのだろうが、ちょっと面白い。慰めてやろうと肩を何回か叩いた。 「大丈夫だよ。全く。お酒を飲もうと言い出したのはそっちなのに」 「友達が家に来て、嬉しくて飲みたくなったんです……飲むともっと楽しいから」 「はいはい。後で襟緩めて寝なさいよ。夜苦しくなるからな」 はい、と泣きながら頷くと寝返りを打ち、しばらく鼻を啜る音が聞こえていたが気がつくと寝息に変わっていた。こんなにすぐ睡眠に入れる男が、誰かいないと眠れないようには見えなかった。 ウェインはリビングと寝室の電気を消し、ぬいぐるみまみれのベッドに入った。布団もぬいぐるみもふわふわして心地いいがとにかく狭い。チャーリーは普段どうやってこのベッドで寝ているんだろう。 彼もほどなく、夢の世界に入った。 鋭い痛みがお尻に走った。 「いっ!?えっ!?」 「起きろ。なぜお前がここにいるんだ」 慌てて起き上がると、先週に比べてやつれて顔色の悪い美形がこちらを睨みつけていた。かなり不機嫌なようだった。 「マシューさん……」 「チャーリーは起きないしパジャマに着替えてすらいない。リビングにあった酒は半分以上無くなっているし片付けもしてない。何なんだ、これは?」 「チャーリーが起きない!?大丈夫なんですか!?」 チャーリーの方を覗くと、彼は大小3つのぬいぐるみを抱えたり顔に押し付けたりして穏やかに眠っていた。びっくりした。昨日の酒が災いしたのかと思った。ぬいぐるみは夜中自分のベッドから持って行ったのだろうか。 「……はぁ。大体予想がつくよ。おれには意地を張って1人で大丈夫なんて言っておいて結局ダメで、リダクナやお前に頼った。そんなところだろ?」 「ええ……まあ大体……」 マシューは心地よさそうに眠っているチャーリーの元まで歩くと、無慈悲に尻を叩いた。心地いいスパンキング音が部屋に響く。いたーい、とチャーリーはもごもご言いながら目を覚ました。 「あ、マシュー……帰ってたんですね。おかえりなさい……。今何時ですか……」 「朝の7時だな。チャーリー、あれだけパジャマに着替えてから寝なさいと言ったろ」 「えー、へへ。ごめんなさい……」 「何度言わせ……もういい。1週間もすまなかったな」 それからまたウェインの方へ向き直り、迷惑かけたな、としっかり目を合わせて言った。 「冷蔵庫にパンもあるし……コーヒーでも飲むか?おれが朝食を作るよ」 「待ってくださいマシュー!俺がやりますから!」 急に覚醒したチャーリーがしわくちゃな服のままマシューを追い越し、牽制した。絶対に、キッチンに、立たないで。そう強く警告すると彼はキッチンに向かった。

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