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第8話-11
手際よくチャーリーが朝食の準備をしている間、マシューもまた手際よく昨日の宴の後を片付けていた。ウェインは手伝わせて貰えなかった。……というよりも、2人のペースを絶対に崩させないという壁が確かにあった。
「出来たので、先に食べてください。俺は顔を洗いたいので」
チャーリーは人数分の朝食とコーヒーを机の上に置きシャワールームに行ってしまった。マシューとウェインは黙々と朝食を摂った。間を取り持ってくれる人間が居なくなると途端に会話が途切れる。ウェインは心地の悪い沈黙に耐えられず、話を切り出した。
「チャーリーって料理がうまいんですね」
「ああ。気を遣ってくれているんだろう」
「へぇ……」
マシューは頑としてこちらを見ようともしない。相当機嫌が悪いか、ウェインを親の仇と思っているかどちらかだろう。
「1週間も仕事だったんですか?」
「ああ」
「何か進捗ありました?」
「お前に何の関係が?」
イラっ。
話を振るのは止めることにした。そこで身だしなみを整えたチャーリーが戻ってきて怪訝な顔をした。空気悪くないですか?
「またマシューが何か言ったんでしょ」
「質問に答えただけだ」
「ウェインさん、気を悪くしないでください。代わりに謝ります」
「いや……」
こんな子供に気を遣わせるなんて大人気ない。
ウェインはマシューに対して恐怖感を抱いていたが、今はあまりの子供っぽさに唖然としてしまっていた。
「マシューは家に人を招きたくないんです……。だけどマシュー、今回は俺が彼を連れてきたんですよ。お客様なんです!少しは愛想良くしてくださいよ!」
「お前の客人だ。お前が接待しろ」
「うわ〜〜本当に不機嫌!ウェインさん、もうこんなの放っておいて一旦外に行きましょう?そちらの世界まで送ります」
「ああ……そうするよ」
こちらまで気分が悪い。朝食とコーヒーを早々に胃袋に収め、さっさと荷物を纏めた。
「マシュー、俺が帰ってくるまでに機嫌を直して反省してくださいね!あと少し寝なさい!」
マシューは無視してパンを齧った。
チャーリーはため息をついてウェインを連れて家を出た。
「ウェインさん……本当にごめんなさい。何日も帰れないとああなるんです。いつもはもっと大人なんですよ」
「部外者のおれが言うことじゃないけど、相当だよ」
チャーリーがしゅんとしているのでウェインは「おれと彼の馬が合わないだけだよ。お前は悪くない」と取り繕った。
「ただ、3人で仲良くというのは無理そうだな」
「ええ。だけど、昨日は楽しかったです。友達って感じがしました」
「まあ、またやろうぜ」
ウェインも昨日は中々に良い気分だった。どうやら、チャーリーとは気が合うらしいことがはっきりした。彼の酒癖には目を瞑ってもいいだろう。
昨日のワープ地点まで来ると、じゃあまた、と視界が一変し「戻ってきた」と体感できた。ふ、と良い気分のまま歩き出そうとした時、とてつもない嘔吐感に襲われた。
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