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第9話-2
情事の後、2人でシャワールームに入った。
「マシュー、不機嫌は直りましたか?」
「ん?うん……」
仕事の疲労もあってか、マシューの返事はぼんやりとしていた。眠いのだろうか。シャンプーを出し、彼の頭でガシガシと泡立てる。
「流しますよ、目瞑って」
「うん……」
「子供みたい」
水圧を強めにしてシャンプーを早々に洗い流す。ベッドの上ほどではないが、お湯でマシューの肌が淡い赤に染まった。何を思ったか、マシューはチャーリーの肩にもたれ掛かり、そのまま背に腕を回した。
「マシュー?」
「淋しかっただろ」
「……」
「お前は淋しがりだから」
とんとん、と背中をあやすように叩かれチャーリーは安心した。何だかんだ、俺はこの人に頼ってしまう。弱いところは見られたくないが、もう散々見られてしまっているので今更だ。
「……リダクナさんやウェインさんがいてくれたので、平気でした」
「本当か?」
「……だけど、やっぱり夜はマシューと過ごしたいなって、確かに思いましたけど……」
「素直でよろしい。……ああ眠い。体を洗ってとっとと上がろう」
「ええ。マシュー」
マシューに上を向かせ、頬と頬をくっつけた。彼の頭を数回撫でて離れた。彼も髪の毛を梳いてくれた。
シャワーを済ませるとマシューはパジャマに着替えて、とっととベッドに入ってしまった。チャーリーは日光を遮断した暗い寝室に入りマシューの近くに寄った。
「マシュー?」
「なんだ……」
「俺も眠たくなってきました」
「……入れ」
マシューが端に寄ってスペースを開けてくれると、チャーリーは嬉しくなった。遠慮なくそのスペースに体を収めると、すかさずマシューが頭を肩に乗せてきた。12時に目覚ましを掛けているから、鳴ったら起こしてくれ。返事をしてマシューの頭にキスをした。ほどなくしてマシューの寝息が聞こえてくると、彼のサラサラとした髪や頬を撫でたり、寝顔をこっそり覗いたりした。
仕事、上手く進んだんだろうか。
目が覚めたら聞かなくちゃな。
チャーリーはマシューの手を取って暖かさを感じ、二度寝をした。
結局目が覚めたのは13時過ぎだった。
「マシュー、起きて」
チャーリーはあれだけ愛おしかったマシューの頬を優しく叩き、ベッドから引っ張り出した。ベッドからリビングに引きずっている時何か寝言を言っていたが無視し、ソファに座らせる。
「マシュー、目が覚めたら洗顔して歯を磨いてきてください。聞きたい事が山ほどありますから」
「家で仕事モードなのやめないか……?」
「出社したら仕事、という事でも無いでしょう」
「優しくして……」
相当堪えているマシューを見て少し罪悪感が芽生えたが、仕事は仕事だ。チャーリーも彼の仕事に関わっているのだから何かあれば即座に聞く資格があるはずだ。
「分かったよ、チャーリー、話すよ」
「その気になってくれましたか」
「だけど……お腹減ったかな。お前が何か作ってくれたら進捗を話すよ」
「子供みたい」
「おれはお前が作るご飯が好きなんだ。どれも美味いから」
「むーー……。適当でいいですよね」
「なんでも」
「わかりました。じゃあ早く顔洗ってきてください」
「ん」
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