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第10話-1
気がつくと随分穏やかな場所にいた。
半袖で心地よい気温、優しい太陽の光、ゆっくりとした流れの川。
チャーリーは木漏れ日が心地良い木の下で目が覚めた。
おかしいな、おれはマシューといっしょにこうえんであそんでいたはずなのに。
「きみ、だあれ?」
「えっ?」
寝転がったチャーリーの真上から知らない子供が顔を覗かせた。全てが白い子だった。長い髪も肌も、瞳ですら白に近い。
人間じゃないみたいだった。
「きみこそだれ?マシューはどこ?」
「マシューなんてしらないよ。わたしはてんしさまをまってるの」
てんしさま?
チャーリーは起き上がって子供の顔をよく見た。女の子のようだった。チャーリーは周りを見回し、再び尋ねた。
「ここはどこ?」
「ここはねぇ。天国なの」
「えっ!?そんなのこまるよ!もどして!」
「なんで?」
「天国ってことは、おれ、しんじゃったんでしょ?そんなのやだ!もどして!」
「おちついて!あなたしんでなんかないわ。ここはてんしさまがつくってくれたのよ」
女の子はにっこりと、心の底から幸せそうに微笑んだ。この子は心の底から"てんしさま"が大好きなのだ。そう感じることが出来た。だが、負けず劣らずチャーリーだってご主人様が大好きなのだ。こんな所に勝手に連れてこられては彼に心配をかけてしまう。
「かえりたい……」
「その、マシューってひとはだれ?」
「おれのごしゅじんさま……あとセンセ……」
「たいせつなひと?」
「そう。いちばんのひと」
「わたしもね、てんしさまはいちばんなの。だけど、あまりかえってきてくれないの」
「……さみしい?」
「さみしい」
チャーリーは女の子が可哀想になったので、少しだけ一緒にいてやることにした。少しだけなら、マシューだって許してくれるはず。
「きみはずっとひとりなの?」
「てんしさまがいるわ」
「ふーん、どんなひとなの?」
すると女の子は照れくさそうに、恥ずかしそうにした。美しくて、優しくて、暖かい人なのよ!なんだ、それならマシューとおんなじだな。
「ねぇ、おはなししよ!おともだちになって!」
女の子が笑顔で言ったので、チャーリーは快諾した。
しばらく2人はお互いの話をしたり、たまに川に入ったり走り回ったりして遊んだ。チャーリーは自分の体があまりに軽やかなので驚いたが、心地よいので無視した。
疲れて眠っていたようだった。チャーリーは体を起こしてきょろきょろと女の子を探した。てんしさま!と声が聞こえたので木の裏からこっそり覗き見る。
天に両手を伸ばし抱擁を求める女の子の先には、大きな羽を持った、女の子より白く大きな天使がいた。
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