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第10話-2
「これは一体どういう状況なんだ?」
セラピストのリダクナは危機感を覚えた。同級生の唐変木……もといマシューがなす術なく慌てふためいていたからだ。まあいつもスカしている同級生が困憊しているのは少し愉快でもあったが、それを出すほどリダクナは子供ではない。それに、こいつは多少苦しめば良いと思うが弟のように思っているチャーリーが巻き込まれているなら話は別だ。
「わからないんだ……影に、連れていかれたとしか……」
「眠っているように見えるけど……」
穏やかに寝息を立てているチャーリーは、ただ眠っているようにしか見えなかった。呼びかけても揺すっても目を覚さないあたり、影に"連れていかれた"のは間違いないらしいが……。
マシューは相方がこんなことになり参ってしまったようで、忙しなく相方の手をさすったり握りしめたりしている。情けなくなり、リダクナは喝を入れる事にした。
「今のお前をチャー坊が見たらどう思うよ?きっとしっかりしてくれってケツを叩かれるぞ」
「チャーリーはケツを叩いたりしない……」
「例えだよ…‥」
これはかなり来てるな……。
「もうそんな事を悩んでも仕方ないじゃない。これからどうするか考えましょうよ」
柔らかいがどことなく圧がある声がかけられた。
クリスティーナは、後ろから長い足を組みマシューを面白そうに見つめていた。あなたは彼が関わるととたんにダメになるわね。それから優雅に立ち上がり、ベッドの縁に腰掛けた。
「この子、また身長伸びた?」
「絶対勝手に触るなよ」
「まだ前のこと引きずってるの?未練たらしいのね」
マシューはキッとクリスのことを睨んだ。この2人は並んでいると美男美女でお似合いのカップルに見られることが多々あるが、実際は犬猿の仲である。器物損壊レベルの喧嘩も何度したか分からない。仕事仲間のため渋々折り合いをつけて上手くやっているだけで、何かあればすぐ睨み合っている。
その2人に挟まれて迷惑しているのは大抵の場合リダクナかチャーリーだった。2人が破壊行動に走ろうとすればリダクナが牽制し、とても聴かせられないような言葉を連発し始めたらチャーリーがその間に入り緩衝材になった。ただ、悪いことに、クリスはチャーリーの従順さと長い物には巻かれる性格をいたく気に入っているためますます拗れるのだ。
「あ〜〜。オレがチャー坊看とくからさ、2人は捜査進めてくんない?上からも急かされてるんでしょ?」
大きく……露骨に大きく息を吐くと、リダクナは2人に向かって手をシッシッと払い出てけのジェスチャーをした。
「リダク、クリスを部屋に入れるなよ。絶対だ」
「へーへー」
「失礼ね。私は悪霊か何かかしら」
「似たようなものだろ」
「オレから見たら2人とも悪霊みたいなもんなんだけどな……」
またまた照れちゃって!とクリスから背中を強く叩かれ、マシューからは鋭い眼光を向けられてリダクナはげんなりした。これだから西の魔法使いは嫌いなんだよな。とっととチャー坊に目を覚ましてもらって全部チクらなくちゃ……。
「じゃあ、そろそろ行きましょうか。あなたのお陰でまた連勤だわ」
「おれのせいじゃないし。ああ……もうとんでもないな」
マシューとクリスは(2人にしては珍しく)ぐちぐち言いながら病室から出て行った。リダクナはホッとひと息ついて改めてチャーリーの容態を見た。
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