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第11話-1
「てんしさま、きれいでしょ?」
女の子が満面の笑みでそう尋ねるので、チャーリーは迷わず「そうだね」と返した。すると女の子はますます機嫌が良くなった。
「わたしね、てんしさまのことがだいすき。あのひとがいないとくるしいの」
「そうなの?」
「うん。あなたもそういうきもちになったりしない?」
チャーリーはあるよ、と答えたが、具体的な事は言うことができなかった。大好きで、離れると苦しくなる人がチャーリーにもいた。
誰だったっけ。
チャーリーは急に不安に襲われ、その不安を払うために話の話題を変えた。
「ねぇ、きみのことおしえて!おれはチャーリーっていうんだ!君のなまえは?」
女の子の答えはチャーリーをますます不安にさせた。
「うーん、なんだったっけ……。もうずっとてんしさまとしかいないから……」
チャーリーは、何か忘れちゃいけない事をすっかり忘れてしまっているような気がした。女の子が不安そうな彼を見て微笑んだ。
「ね、あっちにおいしいくだものがあるの。おなかへってない?」
「へってる!」
チャーリーと女の子は手を繋いで、果樹園の方へ駆けて行った。
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