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感情
今から数時間前、祐羽についての着信があった。
あれから静かになってしまった車内に、再び着信を知らせるバイブが響いた。
九条の仕事などの邪魔をしない為に、バイブにしていても恐ろしく張り詰めた空気の中では、妙に音が大きく聞こえた。
中瀬からの着信に気づき嫌な予感しかない眞山は、それでも躊躇なく通話ボタンを押した。
「今どこだ?どうなってるか、手短に説明しろ」
通話先の中瀬は、焦りと呆れを交えた様な口調で説明をしてきた。
説明によると、どうやら祐羽少年は風俗が乱立する街へと連れて行かれたらしい。
そして風俗店に入ったかと思うと、森田だけが出てきて祐羽は一向に姿を現さないというこだ。
まさか森田が祐羽に女を宛がい、楽しい性の時間を与えてやっているなど、絶対的に有り得ない。
つまりは、風俗へと沈められた可能性が高かった。
「分かった。引き続き監視しろ、無理はするなよ」
通話を終えると同時に、後部座席に身を沈めていた九条がすかさず口を開いた。
「報告しろ」
口調だけで九条の感情を読み取るのは難しいが、眞山からすると今の一言で、心の動きが分かる。
それほどに今回の九条は、感情を露にしていた。
たかが一般市民である高校生相手に、だ。
祐羽の何処に惹かれるものがあるのか?
そして、一体どういう気持ちで関わろうとしているのか…。
九条の心の中までは読み解けるはずもない眞山は、今の祐羽が陥っている状況を簡潔に説明をした。
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