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正体
男の甘い言葉に、祐羽は視線をさ迷わせながらも口を開いた。
今この場で、自分を分かってくれる相手は目の前の男しかいない。
この苦しい、どうしていいか分からない気持ちをことばにすることで、気持ちを落ち着けたい思いもあったからだ。
「あのっ…僕、騙されて来たんです」
男と少し間をとって隣に座った祐羽は、自分がどうしてこの場所に居るのかを順を追って説明をした。
祐羽が話をしている間、男は優しく相槌を打ってくれる。
「そしたら、契約書に無理矢理サインをさせられて」
「サインをさせられたのか…。そんな事を言われたら断れないねぇ」
男は祐羽の肩に、さりげなく手を掛けてきた。
励ますように軽く数回撫でた。
その手に気づいたものの祐羽は、話に夢中になっていたのと、男の触り方があまりにも自然だった為、特に警戒をしていなかった。
「そうなんです…。僕が逆らったら家族に迷惑が、かかってしまうんです」
「迷惑かけたくないよね?君は、なんて優しい子なんだろう」
俯く祐羽に今度こそ男が腕を回してきた。
「えっ⁉」
驚く祐羽に、男が顔を寄せて囁いた。
「サインには逆らえない。家族に迷惑をかけたくない…それにはどうすればいいのか、君には分かるかな?」
あまりに近い男の顔に、祐羽は身動きがとれなかった。
そのまま固まった状態で、それでも首をゆっくり左右に振った。
最善の策があるのなら、是非とも聞きたい。
この場所から逃れる方法。
そして、この世界から抜け出す方法をー…。
ドサッ
祐羽は安いであろうベッドへと、男に押し倒されて呆然とする。
祐羽の華奢な肩を押さえつけた男は、意地の悪いニヤついた表情で、見下ろしていた。
「簡単だ。こうして男と寝て、金を稼いで稼ぎまくる。契約は守るし、家族も守れる。そして、大金が入ればお互い幸せだろう?」
男はそう言うと、目をクククッと気味悪く笑った。
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