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行き先

店の前の道に、高級車がネオンの光を反射しながら停まっていた。 九条が出てきたのを確認した男が、後部座席のドアを開ける。 祐羽を抱えたまま九条が乗ると、ドアがパタリと閉まった。 助手席に眞山が直ぐ様乗ると、運転手の男に何やら伝える。 すると、車は静かに走り出した。 一体どこへ行くのだろうか? 座った途端に解放された祐羽は、自分の心もとない姿に身を縮めつつチラリと隣を見た。 車に乗って一切口を開かない九条は、何を考えているのか無表情だ。 前を見据えたまま微動だにしない。 不機嫌にも見える。 「…ゴクッ」 隣に座り、祐羽は唾を飲み込むと意を決して視線だけで車内を見回す。 乗ったこともない高級車のシートは、座り心地が何ともいえず、良い。 スピードはそれなりに出ているが、振動はあまりなく、車内の静けさが際立つ。 スモークのかかった窓から見える外は、いつのまにか怪しいネオン街から高層ビルへと様変わりしていた。 見たことのない街並みを車は軽快に飛ばしていく。 夜の帳が降りて、煌めく灯りがキラキラ綺麗に流れていく。 そんな都会らしい街並みから、少し落ち着いた場所へと入ってきたと思った時だった。 「…よろしいんですか?」 眞山が肩越しに少しだけ振り返り、九条に確認をとった。 「構わない」 何がいいのか分からない。 コテンと内心というか、気づかないうちに実際に首を傾げて二人を交互に見ていると、その視線に気づいた眞山と視線が合った。 まずいと思ったが、眞山の表情は変わらなかった。 「…心配することもなさそうですね」 すると、どこか呆れた口調で眞山が、呟き頷いたのだった。

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