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彷徨う視線

眞山が前を向いてしまったので、祐羽は視線を戻して、次に隣へとやった。 怖いと思いながらも、九条の顔を見たいという欲には逆らえず、そっと見た。 九条は無表情で前を見据えたままだったが、突然顔をこちらへ向けたと思うと、祐羽を真っ直ぐに捕らえた。 「っ‼」 いきなりの事に驚き心臓を高鳴らせる。 車内は暗くはっきりとは分からない。 けれど、時折入り込む外からの灯りに一瞬照らし出される九条の瞳から伺える表情は、怖いとは感じなかった。 それが余計に、祐羽の内面をざわつかせる。 見られてる。 慌てて視線を逸らした。 膝の上に握りこんだ自分の拳に視線を落としてみたが、横からの強い視線を痛いほどに感じていた。 九条の視線の強さで、自分の頬が焼けそうに感じるのは気のせいだろうか。 早く、とにかく解放してほしい。 そう祐羽が強く願い瞳を閉じた時だった。 強く感じていた視線が無くなったのは。 目だけで様子を伺うと、九条はもうこちらを見てはいなかった。 ホッとしたのも束の間。 車の外へ顔を向けると、見知らぬマンションへと車が入るところだった。 随分と大きな建物だ。 スムーズに車が駐車されたのは、エレベーターの前。 「…ど、どこ?ここ…」 祐羽は不安から思わず声を漏らしていた。 すると、静かに車のドアが開かれた。

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