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夜景の見える部屋
祐羽が開けたドアの向こうは、リビングになっていた。
軽く20畳はあるだろうか。
落ち着いた色で統一してあり、まるでモデルルームの様だ。
どの家具をとっても高級な物だと、無知な祐羽でさえ感じ取れる。
だが、どこか違和感を覚える。
それは、綺麗すぎて生活感というものが一切ないからだ。
無駄な物は表に出さないだけなのか分からないが、とにかく出ている物といえば見る限り、リモコンがテーブルに置いてあるだけだった。
ドアの前に立ち尽くし室内を見回していた祐羽は、九条が見当たらない事に気づいた。
「…どこに行ったんだろ」
ポツリと呟くと、何となく吸い寄せられる様にして窓辺へと向かった。
「う、落ち着かない…っ」
歩く度にバスローブの裾が少し翻るので、下着を着ていない下半身が心許ない。
何となく内股気味になりつつ大きな窓の前に立つと、祐羽は目を見開いた。
「えっ ‼ 凄い ‼」
比較的高い位置にある部屋だと思ってはいたが、ここからの眺望は格別だった。
「うわぁ~綺麗だぁ…」
マンションの場所は定かではないが、街を眺める事の出来る高立地にあることは確かだ。
高層ビルが立ち並び、ネオンと車のテールランプが行き交う様子が夜の闇に上手く溶けて、宝石の様にキラキラと輝いていた。
その夜景を見つめる祐羽の瞳も表情もキラキラ輝いていた。
「こんな綺麗なの見たことない…」
祐羽は思わず両手を窓ガラスへ付けて、食い入る様に飽きもせず見つめていた。
そんな祐羽の集中は、次の瞬間に途切れた。
「おい。外がそんなに珍しいか?」
「うわっ‼⁉」
急に掛けられた声に驚いて顔を向けると、そこにはいつの間にか九条が立って、こちらを見ていた。
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