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動かない体
その光の筋を追って顔を上げると、そこには予想通りの人物が立っていた。
「ぁ…」
自然と声が漏れる。
祐羽は九条の姿を目にした途端、体が金縛りにあったかの様に硬直して動けなくなった。
昨夜の出来事が脳裏に甦ってきたからだ。
自分でも気づかない程度に体を震わせていたが、九条の視線から顔を逸らす事が出来ない。
そのまま見上げてしまう。
九条はゆっくりと近づいてきた。
「おい。体はどうだ」
足の長さがあるので一気に目の前に来ると、涙に濡れた祐羽の事など気にも留めない様子で頭上から無表情で言い放つ。
祐羽はビクビクしながら唇を引き結んだ。
九条が手を伸ばしてきて、祐羽は首を竦めた。
「痛ッ!!」
すると大きな手がグイッと手首を掴んでくる。
そのまま引かれると、体勢が変わり尻へ振動が伝わって思いきり顔を歪めた。
祐羽の小さな悲鳴に、九条の動きが止まる。
「チッ」
「わぁっ?!」
すると、今度は小さく舌打ちをして祐羽を小脇に抱え上げた。
この格好は昨日の理不尽な仕打ちを思い出させるには十分で、祐羽は体の痛みも押さえて泣きながら抵抗した。
「やだやだ、もうしない!!痛ッ、う~離して下さい…うっ、うぅ~…グスッ」
まだ受け入れた場所は痛くて痛くて耐えられないのに、またエッチな事をされたら今度こそ死んでしまう。
本気で蕾が裂ける恐怖から、祐羽は泣きながら九条の手を引き剥がしにかかった。
しかし九条は全く動じることなく、祐羽を抱えてスタスタと部屋を出る。
「え…?」
ベッドへ押し倒されると思っていた祐羽は、予想と違って抵抗を止めると目をパチクリさせて廊下を見回した。
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