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秘書と仮の先輩

祐羽が「ごちそうさま」をして、礼儀として食器を片づけようか…と思った時だった。 ピンポーンと、チャイムが響いた。 誰が来たのだろうかと祐羽が思いながら様子を窺うと、モニターで九条が確認して「入れ」と誰かを招き入れた。 すると、暫くしてからドアの開く音がし、リビングに男が現れた。 「社長。おはようございます」 そう言って入ってきたのは、初めて危ない目に合ったときも昨日も会った男だった。 怖いヤクザが増えて、一体これから何が始まるのか。 もしかして自分の取り扱いについての話ではないかと、祐羽は無意識に口元へ手を持っていき不安に顔色を変えた。 帰らせてくれると言っていたけれど、本当に信じてもいいのだろうか…。 そんな風に思いながら祐羽は、やり取りを見守った。 「眞山。早くから悪いな」 「いえ、いつでもお呼び下さい」 眞山はスーツをキッチリ着こなして、隙のない様子で答えた。 やはり一般人とは何処か雰囲気が違って見えるのは、その筋の人間だと祐羽が知っているからというだけではないと思う。 自然と闇の世界に身を置いている人間特有のオーラなのだろうか。 そんな後ろにも人が立っている事に気づいた。 こちらも見覚えがある。 その男は、祐羽が病院に運ばれた時に眞山の後からやって来た人物だった。 先輩とかなんとか言って、誤魔化してくれた人だ。 眞山と違って普通の人間に近いが、この空間に居るだけに、どこかピリッとした空気を身に纏って見えた。 ダイニングテーブルからそんな三人の様子を遠慮がちに見ていると、眞山がこちらへ視線を向けて一瞬目を見開いた。 その表情は、何処か驚いている様だった。 大きく表情を崩してはいなかったが、一体どうしたのだろうか。 時間と共に不安になってきて、祐羽の指先は冷たくなり小さく震えていた。

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