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許された帰宅

祐羽は眞山と目が合って心臓を縮めて俯いた。 九条とは違った怖さがある。 さすが裏家業を生業にしているだけあって、独特の雰囲気があり、他者を寄せ付けないものを感じた。 何をしにやって来たのだろうか…。 まさか帰宅させてくれるって言っていたのは、嘘だったとか…? ブルッ そんな可能性もあるのだと、祐羽は身震いした。 いくら優しくされたとしても、この男達はヤクザだ。 知らない所では恐ろしい事をしているだろうし、もしかして、これから行為に及ばれるかもしれない。 そんな風に祐羽が少し疑惑に浸食され始めたときだった。 「…全部食ったか?」 低く耳の震える様な声が掛けられた。 九条の声は毒だ。 知り合って間もないというのに、声の耳への心地よさは異常だった。 思い出したくもない昨夜の出来事を否応なしに呼び覚まされる。 「…っ!」 祐羽は訳のわからない感覚に、思わず耳を押さえてしまった。 甘く鼓膜を揺さぶられてしまう。 これは一体、何だろうか。 耳朶も熱を帯びていた…。 「俺の話は聴きたくないか」 そう言われてパッと顔を上げる。 声の主は変わらない様子でこちらを見ていた。 けれど寂しそうな様子に感じるのは、自分の気のせいだろうか。 視線が絡み合う。 祐羽は九条の顔をしっかりと見つめ返した。 「ち、違…っ」 そんなつもは無かったと祐羽は首を左右に振って否定すると耳から手を離した。 「まぁ、いい」 九条はフイッと視線を外しながら、言った。 「メシ食ったなら、帰れ」 え…? 祐羽は九条から目が離せなかった。

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