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複雑な心模様

え…? 祐羽は九条から目が離せなかった。 今、帰れって言った? 帰っていいって…。 帰れないかと一瞬だが脳裏を過っていた分、こうして無事に帰れると分かって祐羽は心底安堵した。 けれど、心の奥で何か分からないがモヤモヤとしたものが引っ掛かった。 …何だろうか。 帰れる事を喜んでいる自分の他に、何処か違和感もあるのは一体どうしたのだろうか。 「この中瀬が、これからあなたをご自宅までお送りします」 祐羽が自分でも分からない心のモヤモヤを抱えながらぼんやりと九条を見つめていると、眞山が視界に割り込んできた。 驚く祐羽に、以前仮の先輩を演じてくれた男が顔をこちらへ向けた。 中瀬という名前らしい。 呼ばれた彼は、至って真面目な顔でこちらを見てペコッと軽く頭を下げた。 この前と雰囲気が違っている。 あの時は軽い今時の若い男という感じだったのに、今はどこか落ち着いた雰囲気だ。 祐羽も何となくペコリと頭を下げた。 「ほら。これに着替えて」 中瀬が側までやって来て、手にしていた紙袋を渡してくる。 何だろうかと中を覗くと、新しい服が一式入れられていたのだった。

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