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理解の範疇
祐羽の不自然な歩き方は、まるでヒヨコの様。
内心焦っていたのだろうが、その速度たるや全くもってどんくさい事極まりない。
祐羽がどうしておかしな歩き方をしているかの理由など、眞山も中瀬も訊かずとも理解していたが、声にすることはない。
ヨチヨチと隣の部屋へと入っていった祐羽から視線を外すと、眞山は九条に向き直った。
「今回は私の理解が、到底及ばないのですが…」
眞山の表情は特別大きな変化は見当たらないが、隣で様子を伺う中瀬からすれば、充分戸惑いが見受けられる。
眞山でもこうなのだから、中瀬などもっと驚いていた。
不自然に強張ったままの顔を九条へと向けている。
その九条はというと、ソファへと座りタブレットを見つめ始めた。
その顔を眞山はジッと見つめた。
自ら動いて助けた少年。
それを今まで夜の相手は誰も入れたことのない自宅へと連れ帰った。
祐羽は案の定、九条に無理矢理犯されてしまった様だ。
けれど先程の様子から、祐羽は思ったよりも取り乱して居ないと感じたのは気のせいだろうか。
それにしても、祐羽の為に九条が自ら朝食を用意したとは…。
信じられない。
晴天の霹靂とは、まさにこの事だろう。
今まで九条には山程驚かされてきた。
だからこそ、今の地位に座り続けられているのだが…。
それがここに来て予想の範疇を超えて、心底驚かされた。
女は嫌になるほど抱いてきた九条だが、男には一切食指を動かした姿は見たことが無い。
たとえ綺麗な青年だとしても少年だとしても、だ。
祐羽の一体どこに…。
これは何度も繰り返して思うことだが、眞山には分かるはずもなく。
その後、祐羽が着替えて戻るまで、黙って九条の顔を見ながら考えていた。
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