節々の痛みに耐えながら、なんとか着替えを終える。 驚くほどにしっくりと自分に馴染んだ服を身につけた祐羽は、荷物を手にして部屋を出た。 独特の空気を纏う人の前に再び顔を出すのは勇気がいったが、そういうわけにもいかず。 祐羽は緊張した体を動かして、リビングへと戻った。 何処かのお坊ちゃんの様な格好の祐羽に、眞山が目を細めた。 「中瀬。趣味がいいな。お前に頼んで正解だった」 眞山の言葉に、中瀬が嬉しそうにはにかんだのが祐羽にも分かった。 眞山の声に、顔を上げてこちらを見ていた九条と視線がぶつかる。 「…」 九条はジッとこちらを数秒見ると、視線を落としてタブレットをテーブルに置いた。 それから立ち上がる。 「あなたはこれから、この中瀬が家まで送ります」 「は、い。…お願いします」 眞山の言葉に、祐羽はぎこちなく頭をゆっくりと下げた。 それからチラッと中瀬に視線を向けた。 視線が合った中瀬は、ニッと一瞬だけ口の端を持ち上げた。