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さようなら

「では、気をつけて」 眞山の見送りの言葉に顔を向けた祐羽は、その後ろから歩いてくる九条に気がついた。 九条さん…っ! ドキッと胸が高鳴る。 眞山も九条が来たことに気がつくと、場所を譲った。 九条のその表情は読み取れないが、自分を見つめる目に浮かんでいる色は、怖くない。 だからか、祐羽も思わず見返した。 しかし何を考えているのか分からず、居たたまれなくなった祐羽は視線を落とす。 「気をつけて帰れ。お前ら、きっちり送れよ」 祐羽は思わず顔を上げて、九条の顔を見た。 すると、もう既に鋭い目付きで部下を見据えていた。 「いいな」 その言葉に中瀬と黒服の男は「はいっ。確実に送り届けます」と、頭を下げた。 その時の九条の顔は、祐羽に見せていた物とは違っていた。 目の色も声音も全く違うのだ。 ゾクリと背筋に何かが走る。 これが本来の九条なのかもしれない。 圧力と暴力で相手を捩じ伏せてしまう…。 「じゃぁな」 その時には九条の顔など見ていなかった。 怖くて見ていられなかったのだ。 「さ、さよなら…っ」 祐羽は痛む体を叱咤して身を翻すと、逃げるようにその場を離れたのだった。

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