109 / 1012

沈黙の心

エレベーターで降りると昨日と同じ様に車が停まっていた。 「ほら、乗れよ」 中瀬の言葉に逆らう事など考えられず。 また思いもよらず他に帰宅の術もなく。 祐羽が素直に従って後部座席に座ると、先程の黒服の男が助手席に座り、それとは別に運転手が居た。 ゴクッと祐羽は新たな緊張に息を飲んだ。 乗ることのない高級車に、運転手。 ヤクザの男達の乗った車へ一般人の自分が座っている不思議。 異空間に誘われた感覚に、祐羽は車外に居る中瀬に目を向けた。 中瀬は周囲を確認すると直ぐ様乗り込んで来た。 「よし、出せ」 祐羽の隣に中瀬が座ったのを確認すると、助手席の男の合図があり、車は静かに走り出した。 マンションから公道に出ると、もう太陽は昇っていて、眩しいくらいの天気だった。 ちょっと目を細めて窓の外からマンションを見上げる。 とても高くて、あまり見上げると太陽が眩しい。 外観も他のマンションとは違いしょうしゃな造りをしていた。 さっきまで自分が居た場所かと思うと、不思議でならない。 一般の高校生。 それが高級な縁の無いようなマンションの一室へ連れて行かれて…。 何故、自分はあの場所に連れていかれたのか。 どうして… 「お~い、月ヶ瀬とかいったな?」 「!!」 その時、急に話しかけられ祐羽はそこで意識を途切れさせた。

ともだちにシェアしよう!