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本来の姿

「ちょ、聞いてんのか?お~い、呑気なヤツだな~お前はぁ~」 さっきまでと雰囲気が変わり、前回初めて会った時の口調になっている。 服を着替える時にも若干こんなしゃべり方だった。 この中瀬という男。 本来の彼は、こっちなのだろう。 怖いよりは話易い。 祐羽は「聞いてます、聞いてますっ!」と首を縦に振った。 「ん~なら、これから話する事はお前にとって大事~~~な事だから。しっかり頭に入れろよ!!」 大事なこと? 「返事!!」 「は、はいっ!!!」 急に大きな声で言われて、祐羽は慌てて返事をした。 姿勢を正した祐羽を見て、中瀬はフフッと鼻だけで笑った。 「無断外泊したらヤバイから、俺がまた一応お前ん家に電話は入れといたから。…まぁ、今回あんまりいい感じじゃなかったけどな~」 と、中瀬がぼやいた。 そうだった。 今回も無断外泊という形になる。 自分に降りかかった諸々のことで、再び両親への連絡等祐羽は言われるまですっかり忘れていた。

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