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安堵

そんな両親と堺の話をボンヤリと見つめていると、中瀬が側に寄ってきた。 なんだと思うと同時に中瀬が口を開く。 「本当にごめんな?気づくの遅れて悪かったよ月ヶ瀬」 中瀬が普段から仲の良い先輩を演じて、肩に手を置いてきた。 とても昨日今日知り合った関係とは思えない自然な仕草だ。 「いえ、そんなことは…」と、返す。 「僕も迷惑かけて…。すみませんでした…」 自分だけ黙っているのもおかしいかと、ついて出た言葉は嘘。 酒を間違えて飲んで、挙げ句に酔っ払った…そんな事実はない。 どうしてヤクザと一緒になって、両親にこんな嘘をつかないといけないのか。 笑いながら堺と話する両親を見ながら、祐羽は苦い顔でなんとか笑って立っていた。 話が一通り終わったのだろう。 「それでは、そろそろ失礼します。本当にこの度はすみませんでした」 堺が頭を下げた。 「本当にすみませんでした」 堺がそう言うと、中瀬がしおらしく頭を下げる。 それを見て、亮介が直ぐに笑顔を見せた。 「そう何度も頭を下げないでください。大丈夫ですから!」 「月ヶ瀬さん…」 「これからも息子さんには、うちの祐羽がお世話になりますので。…宜しくお願いするよ」 亮介は堺に頭を下げながら、中瀬の顔を見てニコッと笑いかけた。 そう言われた中瀬は、仮の先輩としてだが力強く頷いた。 「はいっ。任せてください」 爽やかな笑顔を見せられて、両親が安堵した様に笑う。 それを複雑な心境で祐羽は見つめていた。 「それでは、失礼致します」 堺と中瀬がこれでもかと頭を下げた。 「いえ、こちらこそお世話になりました。ありがとうございました」 「ありがとうございました」 亮介と香織が、すっかり打ち解けた様子で声をかけた。 そうして玄関のドアが開けられて中瀬達が出ようとすると、両親が見送りに向かおうとする。 「あぁ、ここで結構ですよ」 堺が人の良さそうな顔でやんわりと拒否をした。

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