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懐かしい部屋
ふたりを見送った両親は、やれやれといった様子で祐羽に向き直った。
「どんな先輩かと思えば、いい先輩で良かったな~祐羽」
亮介の言葉に香織も頷く。
「本当にね~爽やかな感じで。あちらのお父様もいい方だったし」
確かに裏の顔を知らなければ普通にそう思うだろう。
連絡をして謝罪に来て、そして汚れたからと息子に服までくれるのだから。
見た目も優しく頼もしい父親と爽やかで好青年という二人に、両親が疑いを向ける余地はなかった。
そんな両親に、祐羽は力なく笑って応えた。
「心配かけてごめんなさい…。あと疲れたから部屋に戻ってもいい?」
祐羽が窺うと亮介が「慣れないお酒で二日酔いか?」と心配して部屋へと着いてこようとする。
「違うよ、お父さん。着いてこなくても大丈夫。でもちょっと、ゆっくりしたい…」
「そう。なら、お昼ご飯になったら呼ぶわね」
香織に言われて頷くと、祐羽は体になるべく響かぬように、ゆっくりと階段を上っていった。
階段を上って廊下と呼ぶには短すぎる通路の直ぐ右側が、祐羽の部屋だ。
ドアを開けて入るとたった1日離れただけの部屋が、妙に懐かしく感じた。
毎日過ごしてきた変鉄のない部屋。
あの部屋とは何もかもが違う。
けれどこの場所が、一番安心するし好きだ。
「はあっ、帰って来れた…」
安堵感から祐羽は荷物を床に置くと、そのままベッドへと転がった。
臀部に響いたが、それさえも今は安堵感が勝り気にならない。
家に帰れたんだ…。
大きく息を吐くと、ベッドに乗せている犬のぬいぐるみをギュッと抱き締めて目を閉じた。
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