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勘違いの結果
九条が目の前に居る。
それだけで、祐羽の緊張感は一気に全身を駆け巡る。
息をするのも苦しい程の張り詰めた空気が、部屋を満たしていた。
「それでは明日また迎えに参りますので。失礼します」
固まる祐羽の横で軍人の様にピシッと頭を下げた眞山は、リビングのドアを閉めて出て行ってしまった。
「あ…」
思わず声を掛けようとしたものの結局、その声は届かず。
玄関の開閉音の後に鍵の閉まる音がした。
置いていかれた。
「おい」
「!!?」
絶望を感じながらリビングの閉まったドアを見つめていたが、声を掛けられてこれまでにない程に心臓を高鳴らせた。
ギクシャクとしながら、ゆっくりと声の主へ視線を向ける。
祐羽が顔を向けた先では、九条がソファにどっかりと座りこちらをジッと見ていた。
この人は本当にヤクザだろうか?と疑いたくもなるその整った顔と体躯は、俳優かモデルと言われてもおかしくない。
その男らしい顔は、一体何を考えているのか分からない。
無表情で祐羽を見ている。
「座れ」
「あ…う…っ」
射殺されそうな視線に祐羽は足元が震えるのをなんとか踏ん張り体を動かした。
そのままフローリングに正座をすると、両手を太股へ置いて握り締める。
どうなるのかという思いに脳をグルグル回しながら頭を垂れる。
ここへ連れて来られた理由が思いつかないうちは、どう反応を示せばいいのか分からない。
なので黙って様子を伺うのが一番だろう。
フローリングに直は、さすがに足が痛い。
少しもしないうちに床に面した足の痛みからモゾモゾ体が動き始めた祐羽に、九条が溜め息混じりに声を掛けてきた。
「何処に座ってる…」
「ぇ…?」
間の抜けた声と共に九条を見ると、顎で向かいのソファを示された。
「あ…あははっ」
勘違いした恥ずかしさに誤魔化し笑いを浮かべ慌てて立ち上がる。
そしてソファへ向かおうとした祐羽は、自分が思っていたよりも足の感覚を奪われていたらしい。
「わぁっ?!!」
ビタンッ
その場に思いきり不様に転けてしまったのだった。
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