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おやつの時間

無駄に広い部屋に重苦しい沈黙が流れる。 防音もしっかりしているらしく外からの音は一切しないし、誰かが訪ねてくる様子もない。 窓の外には薄い青空が広がっている他は、特別何かが見える訳でもない。 少し遠くに見覚えのあるタワーが見える他には何もなく、この部屋が最上階にあることが改めて確認出来ただけだった。 特にやることもなく、会話もなく。 ちまちま飲んでいたジュースも残り少ない。 飲み終わったらこの後どうしようか…と、祐羽は頭の中をグルグルさせていた。 一方、九条はというと相変わらずの無表情でタブレットやPCで何やら仕事をこなしている。 その姿をチラッと見ては、働く男のカッコよさを感じずにはいられなかった。 相手は恐ろしいヤクザのトップだ。 何を考えて自分をここに連れて来させたのか、この後どうなるのかという疑問や九条の怖さを知ってはいるが、今はどちらかというと興味の方が大きい。 今すぐ殺されるとかいう危機が薄いからか、それとも元々祐羽が持っている『なんとかなるだろう』という呑気な性格も相まっての結果かもしれない。 ヤクザなのに普通の会社の人みたいな仕事もするんだなぁと感心していると、PCのキーボードを叩いていた九条の指がふいに止まった。 「?」 祐羽がどうしたのかと不思議に思い瞬きをするのと同時に九条が声をかけてきた。 「おい」 「っ!!!?」 あまりに突然で驚きに声を発せない祐羽を気にするでもなく、九条が言葉を続ける。 「…ジュースまだ要るなら冷蔵庫の中だ」 「…え?」 「自分で好きに入れて飲め。他に腹減ったならパンも買ってある」 そう言われて何気なくキッチンの方へ視線をやると、ここからでも分かる。 何もなく広々としたキッチンのカウンターに、見覚えのあるパン屋の袋があった。 無機質なキッチンの中で、そこだけ生活感が出ていて、何とも不思議な感じだ。 「飯までまだ時間がある。パン食えよ。子どもには必要だろう?おやつの時間だ」 「おやつ…」 九条から出た不似合いな単語に、祐羽が何とも言えない顔で部屋の時計を確認する。 確かに時間は午後3時を示していた。

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