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やっぱりヤの人

そうして選んだパンにかぶりつくと、丁度同じタイミングでリビングから低い声が聞こえてきた。 「おい、報告しろ」 これは聞いていい話なのか、どうなのか? でも九条がそこで話を始めたのだから、まぁ大丈夫なのだろう。 「あ?嘗めてんのか」 一段と低くなった声に、祐羽はパンを食べるのを一旦止める。 「全部取り込め。いいな、溢すなよ」 ここからでもドス黒いオーラを垂れ流し、何処かイライラとしているのが分かる。 そのイライラを落ち着かせる様に、無駄に長い足が組み替えられた。 まるでモデルの様だと思ったが、次の言葉に祐羽は硬直した。 「二度と歯向かわない様に…」 その時の九条の顔といったら悪魔と言っても過言ではない。 歯向かえばどうなるかを想像して、祐羽はゾゾゾーッとした。 さっきまで呑気にも殺されないだろう~とか思っていた自分の愚かさを恨みたい。 この人はやっぱりヤのつく人だ…! あまりの怖さに、祐羽は半分食べたパンを思わず小袋に戻してしまった。 前は帰れたけれど今回も帰してくれる保証はどこにもない。 それなのに誘拐犯の親玉の元で、美味しいパンをご馳走になっているなんて何処のバカだろうか。 このまま拉致監禁になったら…と思うと嫌な汗が出てきてしまう。 そもそも九条が自分をここへ連れてきた目的は、未だ謎だ。 「え、まさか…また?」 思い当たるのはただひとつ。 「またエッチな事をしたいから…?」 言葉にしてそれがリアルになる。 そして脳裏には、あの時の痴態が甦った。 「おい、食わないのか?」 「ひゃいっ?!!」 恥ずかしい記憶に顔を赤くして悶えていた祐羽は、九条が来ていた事に全く気づいていなかった。

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