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食べるしかない

肩を竦めながら見上げると、九条が恐ろしい程の目付きで見下ろしていてヒィッと声にならない悲鳴を上げてしまう。 そんな祐羽に九条がもう一度訊いてきた。 「食わないのか?」 パンの事だと理解して首を横にブンブン振った。 食欲が無くなったとかいってられない。 九条が用意して勧めてくれたパンを囓って残すなんて有り得ない。 というかそれこそ命の危機だ。 「た、食べます!」 直ぐ様パクついた祐羽を見て九条はフッと息を吐くと、そのままキッチンへと入った。 妙にバクバク高鳴る心臓を落ちつけながらパンを咀嚼する。 そうして目だけで、九条の動きを追いかけた。 九条は立派なコーヒーメーカーの前に立って何やらしている。 どうやらコーヒーのお代わりの様だ。 恐ろしい電話での会話も終わった為か、九条は先程までと放つオーラが違う。 今は普段、祐羽の前に居るいつもの九条だ。 とはいえ、いつも会っているわけでも何度も顔を合わせた相手ではないけれど。 それでも知っている九条の中では、今は穏やかな方だと思う。 そうだ。 このパンも目の前の九条が用意してくれたのだ。 ヤクザという肩書きと暴力を目の当たりにした恐怖はある。 けれど、こういう穏やかな姿も垣間見せる。 どっちも九条の姿ではある。 そのせいで祐羽は混乱していた。 ヤクザという不穏な要素に頭が警告を発する一方で、本当は優しい人なんだという心が訴える。 圧倒的経験値の少ない祐羽には、どう考えたらいいのか?どの考えに従えばいいのか?全く結論に至らない。 「ふ~っ…」 思わずパンに齧りついたまま大きな溜め息をついてしまった。 そのままムグムグ食べると、手持無沙汰を誤魔化す様にもうひとつ取り出す。 とにかく今は食べるしかやることが無い。 「あ、これ美味しそう…」 ボソッと呟きながら取り出したのは、焼けたチーズがパンを覆っている物だ。 「こんなにたくさんのチーズ…贅沢だな~」 チーズが好きな祐羽は、喜んで取り出したパンにあーんと口を開けて迫る。 そんな祐羽の向かいに、九条がコーヒー片手に座ってきたのだった。

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