157 / 1012
息苦しい時間の中で
これ以上何を言っても九条は受け入れてくれないだろう。
それに拗らせてもっと無茶苦茶な提案をされては、それこそ困る。
祐羽はコクリと頷いた。
「…分かりました。なるべくそうし、」
「なるべくじゃない絶対だ。決定事項だと頭に叩き込んどけ。いいな?」
「う…っ」
息を詰めた祐羽に、九条が追い討ちをかける。
「返事をしろ」
「……はい」
渋々とはいえ承諾した祐羽に、九条は満足そうに口元を緩めた。
「今夜は8時には自宅へ戻してやる。それまでここでのんびり過ごせ」
家に帰してくれるらしいが、その時間までまだ四時間近くある。
目眩が起きそうだ。
九条はのんびり過ごせというが、このいつ何が起きるか分からない場所でそんな過ごし方、誰が出来るというのか。
九条が少しは優しい人だと思った事もあったが、時折さっきの様な怖い顔や声を出されれば、安心して過ごすなど不可能だった。
戸惑いと困惑や知らず知らずに強張る表情の祐羽に、九条が声を掛けてきた。
「何だその顔は…。納得いってない顔だな」
それはそうだ。
一方的に何もかも決められてしまっているのだから。
それをはいそうですか、分かりましたなんて素直に直ぐ様返事できるほど能天気ではない。
とはいえ九条の顔を見れば、やっぱり頷くしか道はなさそうだった。
ともだちにシェアしよう!