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勘違いに自意識過剰
いきなり強い力で引っ張られた祐羽は、驚きと共に嫌な考えが頭を巡り顔面蒼白になった。
「うっ…っ!!?」
寝室に連れていかれるという危機感に、抵抗を試みようと足を踏ん張った。
けれど九条の力は想像以上に強く、祐羽の抵抗は無かったも同然だった。
九条は特に力を込める事もなく易々と祐羽を引っ張る。
嫌だ!!と全力拒否の姿勢を示そうとした祐羽だったが、辿り着いた場所に呆気にとられた。
「…あれ?」
リビングのソファーだった。
そこにさっさと座った九条が、「お前も座れ」と声を掛ける。
「え…?」
「あ?聞こえなかったのか?ここへ座れと言っている」
示されたのは九条の隣。
自分の勘違いに盛大に恥ずかしくなった祐羽は、顔を紅潮させた。
そうだ。
自分の様な男に二度もあんなことをしたいと思うはずがないではないか。
「座って…何を…」
「飯まで時間がある…。何か観るか?」
そう言ってリモコンを片手にした九条は、まだ座ろうとしない祐羽を見上げた。
そうなると居たたまれなくなり、祐羽はこの場から逃げ出したくなった。
トイレに行きたいと咄嗟の言い訳に、九条からの許可を貰った今、祐羽はトイレに駆け込んでいた。
「あ~僕のバカ!!勘違いとか恥ずかしい…っ!」
ついでに用を足しながら、自分の自意識過剰さに自己嫌悪しつつも、個室の快適さに心を落ち着ける祐羽だった。
「はぁっ…。トイレから出たくないよ…帰りたい」
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