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キッチン

ドキドキする心臓を落ち着けようと、小さく深呼吸をする。 しながら立ち上った九条を見送る。 九条が何処へ行くのかと見ていると、キッチンへと入っていった。 それからフライパンや鍋を取り出し始めたかと思うと、祐羽へと視線を投げてきた。 今はもう九条と目が合うだけで心臓が悲鳴をあげる。 さっきの事ですっかり初めての行為を思い出して、すっかり脳ミソが染められてしまっていた。 九条にその気はなくとも無駄にフェロモンが垂れ流されていて、免疫の無い祐羽は頬を赤らめたまま見つめ返した。 何でこんな恥ずかしい気持ちにならなきゃいけないの? そんな祐羽とは正反対に、九条は平然としている。 「おい」 「は、はいっ!!」 声を掛けられて慌てて返すと、九条はシャツの袖を捲っていた。 袖から伸びる腕も逞しいというか、何故かドキドキさせられてしまう。 「食えないもんあるか?」 食えないもん? 急に訊かれてキョトンとする。 食べられない物は… 「えー…と、辛いものとなまものが…」 「分かった」 そう返事をした九条は、さっそく冷蔵庫を開けて食材を物色し始めた。 って、えっ、ええっ?! 九条さんが晩ご飯作ってくれるパターン?! まさかの展開に脳は大混乱。 てっきり九条の事だから外食かケータリング辺りだと思っていた。 どうやら九条がこれから料理するらしいことに気づいた祐羽は、自分だけ座っていられなくて慌てて立ち上がった。

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