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第201話 電話から聴こえる声は
自分のうっかりを嘆いていても仕方がない。
繋がってしまったのだから返事するしかないわけで、祐羽は渋々口を開いた。
「…はい」
『…』
「……」
『……』
「………、っ」
返事をしたものの祐羽からは用事もなければ、九条へ言うことは何も無い。
向こうからかけてきたのだから、九条が喋らなければ話は進まない。
元々コミュニケーション能力の高くない自分と口数の少ない九条が電話で上手く話せるとは思わなかったが、ここまでとは思わず祐羽は焦りに脳みそがグルグルし始めたのを感じた。
どうしたらいいの?
九条さん用事があるなら早く話して欲しい。
この沈黙。
いつかと同様に、沈黙地獄突入になるのだけは勘弁してほしいと祐羽が眉根を寄せた時だった。
『…今、家か?』
こちらを伺うようにボソッと九条が訊いてきた。
「ひゃいっ!」
沈黙に気を抜いていた祐羽は、いきなり話しかけられて驚いて返事と共に舌を噛みそうになる。
そしてこの時、祐羽はある事にも気づいた。
『ひとりか?』
電話越しに話す九条の声は、まるで直に耳元で囁かれているかの様だ。
低めの甘い耳に心地よいその声は、九条の魅力を増幅させている。
その声を耳にした祐羽の背筋に、何か得体の知れないゾクリとしたものが走った。
体全体広がったそれは、熱と震えを与え芯に何か灯すような不思議なものだ。
それは何処かで身に覚えのある感覚で、頬が一気に熱くなる。
何だろう、この感じ。
体の芯が少し火照っているのは気のせいだろうか。
祐羽は気にしないように、意識をその感覚から無理矢理引き剥がした。
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