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第214話 曲がった先に
「なーんだそっか、そっか」
そんな祐羽の思考は、突然の部長・宇佐美の声に遮られた。
「だよな~。月ヶ瀬に限って女とか」
「ないない。出来るワケないわ~」
「ありえないって、月ヶ瀬に彼女とか想像つかないって~」
と随分酷い言われようだ。
部員達の明るい茶化す様な声に、祐羽も苦笑いする。
「そうですよ。第一、相手は男の人ですし」
祐羽が困った様子で言いながら鞄にスマホをしまいこんだ。
「男の…」
「人?」
「それはそれで解せん!」
誰だ相手は?!と周囲がまた騒ぎ始めて祐羽は何で?!と困惑する。
説明のしようがないので、親戚の人と誤魔化した。
そんな祐羽を囲んで部員は門を潜り抜ける。
そこで数名と別れて、残りのメンバーと一緒に駅へと向かう。
門を潜り抜けた瞬間から、祐羽ははやる気持ちが押さえられなくなっていた。
この道を曲がれば中瀬さんが待ってるはずだ。
そしたら九条さんの家に行って、話しが出来る。
どんな顔をして迎えてくれるだろうか。
そんな事を考えながら道を曲がると、そこには見覚えのある黒の高級車が三台停まっていた。
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