普通の戸建てやアパートが並ぶ住宅街に、不自然な高級車。 街灯に照らされて煌めく漆黒のボディが異様な雰囲気を放っていた。 「ちょ、なんかヤバそうじゃね？！」 コソッと囁く部員の声に、周囲も「ヤーさんっぽいよな」と同調する。 あってる。 きっと中瀬さんの迎えだと思うけど。 ここからだと運転席など中は確認出来ないが、このタイミングなので間違いないだろう。 けれど3台で来ているとは思わなかった。 もしかすると用事がある途中での送迎だろうか？ 「どうするよ？」 「反対側に渡るか？」 部長と副部長の会話を耳にしている間にも、ジリジリと少しずつ近づいていた。 ２０メートルもない程まで来て、宇佐美が反対側へ渡ろうと声を掛けた。 祐羽としてはこのまま車へ向かいたい。 「え、あっ、え～っと」 それを伝えようと祐羽が声を上げ、部員が何だこんな時にと焦りながら視線を投げた時だった。 ガチャッというドアの開く音と共に、車の助手席から男がひとり降りてきた。 部員はあからさまに動揺してそちらを見た。 背の高い体格の良いスーツに身を包んだ短髪の男がひとり。 どうみても堅気ではなさそうだ。 「えっ？」 中瀬が来ると思っていたのだが、姿を現したのは眞山であった。