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第233話 会いたい時に限って
それから部活仲間は「部長に報告、報告~っ」と言ってメッセージを送り始めた。
みんな、よほど心配してくれていたらしい。
自分が逆の立場でも同じ反応を見せたに違いなかっただろう。
自分がヤクザと繋がるなんて、夢にも思わなかった。
こんな大変な事なのに、どうしてか深刻に思っていない。
自分はそこまで呑気だったのか?と呆れもする。
あれだけ怖いと思っていた相手。
それが今は不思議と九条がヤクザだからといって、そんな理由で嫌いだとか怖いとか思えなくなっている自分に気づいた。
何故そう思う様になったのだろうか。
気持ちの変化に気づき戸惑う。
この気持ちの変化についても、今度九条と話をして、彼の自分に対する思いを知ることが出来たなら、分かる事だろうか?
早くまた九条に会いたい。
会って今度こそ、色んな話をして思いをきちんと聞きたい。
そうしなければ、この訳の分からない気持ちに振り回されておかしくなりそうだった。
「でも次はいつ会えるかなぁ…」
いつも九条から中瀬を通しての連絡で迎えが決まる。
以前取り決めた約束では、家で待つように言われていたが…。
「昨日の今日だし、連絡ないよなぁ…」
あれだけ嫌がって関係を断ち切ろうとしていたはずの九条との連絡を心待にする日がくるとは…。
けれど、そういう時に限って連絡が来ないまま数日が過ぎた。
こちらから連絡をとも思ったが、もしかして自分に興味を失ってしまったのでは?…そんな思いも過ったが、九条の仕事が忙しいのかもしれないと都合よく考えていた。
しかし一向に来ない連絡に、祐羽は日に日に気落ちしていった。
そんなある放課後。
「おいっ、月ヶ瀬。こっち、ちょっと…」
「あ、はい。…渋谷先輩、何ですか?」
部活終わりにイケメンと自他共に認める先輩である渋谷がコソッと差し出してきたのは、水族館のナイトパスのチケットが2枚。
「いや、その~サービスチケット貰ったんで彼女と行こうと思ってたけど、明日までなんだよな。で、えっと彼女都合悪くてさ…」
渋谷は頭を掻きながら、どこかソワソワしながらそう切り出した。
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