232 / 1012

第234話 口実にして

「水族館…ナイトパス…」 夜の水族館チケット…それなら九条さんも行けるかも…。 「それでさ。…もし、月ヶ瀬が都合良かったら俺、」 「えっ、いいんですか?!」 祐羽は渋谷の声に被さる勢いで訊いた。 このチケットを口実にして、九条に明日会えないかと声を掛けよう。 いつまでも待っているだけでは事態は動かない。 きっかけがないと自分には到底無理な話だが、これなら自然と誘える。 それに、九条の自宅だと緊張しすぎて上手く話せないかもしれない。 けれど、そういう場所なら…。 「そういえば魚とか見てて癒されるし、青色って確か犯罪抑止力あるって聞いたことあるし穏やかに話せるかも…」 よし、決めた。 ダメかもしれないけど、九条さんを誘ってみよう! 「渋谷先輩、チケットありがとうございます!知り合いに丁度お礼したかったので、一緒に行けるか誘ってみます!!」 祐羽はチケットを受け取ると笑顔でもう1度お礼を述べルンルンで帰る為に集まり始めた部員の元へと向かった。 「え、あ~っ月ヶ瀬…」 その背中を見送る渋谷に、陰から二人のやり取りを見ていた田中がやって来て「残念でした~」と笑ったのだった。

ともだちにシェアしよう!