235 / 1012

第237話 通知

パンを祐羽が食べていたシーンが脳裏に甦った。 まさかの展開に焦った記憶がある。 それから九条の祐羽に対する扱いが加速していった気がする。 そう考えれば、九条の不機嫌の理由にも納得できるというもの。 祐羽と定期的に会うという驚きの報告を受けたものの…それ依頼、実際に会ったのは1回なのだ。 これからも機嫌良く働いて貰わなければ、社員も胃炎を起こして倒れかねない。 そして組の部下などに当たり散らされては、たまったものではない。 最近、少し敵対関係にある組に焦臭(きなくさ)い動きがある。 そんな時に旭狼会に限って有り得ない話ではあるが、トップが腑抜けて使えませんでは面倒が大きくなる。 ここは中瀬に連絡して、何とか理由をつけて月ヶ瀬祐羽を連れてくるしかないか? それにしても社長は何を…さっさと呼び出してしまえばよいものを珍しい…。 眞山は仕事が終わってから、中瀬に連絡を入れ忙しくて九条が無理なら祐羽をここまで連れて来ようと決める。 九条の為なら祐羽には人身御供にもなってもらう。 そう決めて、再び書類のチェックを始めた。 それから二時間程して、漸く書類の確認が全て終わる。 九条は額に手を当てて机に俯いて、溜め息をつく。 かという自分もこめかみがズキズキと疼くが、秘書兼右腕としては最後まで頑張らねばならない。 「社長、お疲れ様でした」 声を掛けると、九条がフーッと息をついて椅子に背を預けた。 「本日の業務は全て終わりましたので、車を表へ回します」 「頼む」 眞山が運転手へ連絡を入れる様に指示を出していると、視界に映る九条がスマホを取り出して通知を確認しているのが見えた。 そんな九条の目に力が一瞬だけこもるのが分かる。 直ぐにスライドさせて画面をじっくりと見つめている。 こんな時でも表情に変化は無いが、いつもと違うことは伝わってくる。 「…?」 何だ?誰からだ? 眞山は通話を終えても、気になってしまいそのままの姿勢で九条の様子を伺った。

ともだちにシェアしよう!