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第239話 その一言さえも

よし、取り敢えず明日会ったらお礼を言おう。 仕事の時間を割いてくれたかどうかは別にしても、来てくれた事に変わりはないんだし。 「んー…、もしかしたら九条さん魚とか水族館が好きなのかも?でも例えそうだとしても、それで僕と会ってくれるんだったら十分だよね」 そうだ。 魚が好きかも聞けばいいんだ。 会話の切っ掛けになるかもしれないし。 いい考えかも。 祐羽はさっそくチケットを手にして、水族館の所在地の地図と、それから待ち合わせ場所と時間の確認を九条へ送った。 【16:00からなんですけれど、何時の待ち合わせが都合がいいですか?】 直ぐに既読と共に返信がくる。 そして【17:30。迎えを寄越す】と送られて来たが丁重にお断りする。 【学校からの方が水族館が近いので自分で行きます】と返した。 せっかくの好意を断って気分を害してないかと心配したが、既読がついて【分かった。またな】と最後に返ってきた。 またな…。 そのたった一言が嬉しすぎる。 明日、会える。 祐羽は暫く画面のやり取りを何回も繰り返し読み返した。 もし誰かが見ていたらきっと自分の顔はいつになく緩んでいるだろう。 それだけ嬉しいのだ。 漸く満足した祐羽はメッセージ画面を閉じた。 「九条さんと水族館かぁ…。よし!ナイト水族館ってどんな感じなのか調べとこ、っと♪」 祐羽は高鳴る期待に胸を膨らませて、さっそく水族館のホームページを開いた。 ふむふむとナイト水族館について調べる。 たくさんの種類の魚の水槽が暗闇の中を照らされている紹介画像や館内図が載っている。 他にもお土産を売っていたり、イートインコーナーもあったりと大きな建物だった。 祐羽自身も久し振りの水族館という事で、純粋に楽しみだ。 一通り見終わると、改めて益々期待に胸が膨らむ。 「まだ10時かぁ…。でも明日の為に早く寝よ」 祐羽は室内の電気を消すと、布団に入った。 そして(明日は楽しい1日になりますように)と祈りながら目を閉じた。 その日は九条の夢を見たような気がする…。

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