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第252話 はじまりのゲート
「あのっ…ボクはいいんで皆さんでって…それも駄目だぁ…2枚しかないしっ、どうしようっ、」
「コイツらには必要ない」
「で、でも…」
焦り戸惑う祐羽に九条はそう言うが、そんな訳にもいかないと口を開くと、その様子を黙って見ていた眞山が微笑みながら首を振った。
「月ヶ瀬くん、私達は結構です。社長とあなたがお戻りになるまで、そこのフードコートで美味しい物でも食べてのんびりさせて頂きますので」
「ほら、鞄貸せよっ。重いだろ?預かっといてやるから」
笑みを浮かべた眞山の横から中瀬が手を伸ばしてきた。
とはいっても申し訳ない…と遠慮していると、中瀬が「早くしろ」と鞄を無理矢理奪おうとするものだから、財布とスマホだけ取り出して渋々渡した。
「では社長、ここでお待ちしておりますので」
眞山が頭を軽く下げると、中瀬も同じ様に九条へと下げたが、顔を上げると祐羽に(楽しめよ)と口パクしてくれた。
何だかんだと祐羽を気にかけてくれているのだ。
そんな二人を置いて行く心苦しさに何度もペコペコ頭を下げてしまう。
そして、ふたりに何かお土産買って来ようと心に決める。
「いつまで頭を下げてるつもりだ」
「わっ?!」
すると祐羽の頭をガシッと掴んだ九条に、無理矢理向きを変えさせられた。
それから「行くぞ」と祐羽の背中を優しく促してくる。
「は、はいっ!」
九条の手の熱さを背中に感じながら、祐羽はこれから始まる水族館での出来事を想像し、元気よく返した。
足が不思議と軽くなる。
そして二人揃って入り口ゲートへと向かった。
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