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第301話 似ているのは…
コーナーをグルリと一回りした結果、九条の持つカゴの中には菓子箱が7箱入れられていた。
九条の部下への土産に関して何がいいか、人数は何人かを訊いてみたが「必要ない」とピシャリと払い除けられてしまった。
それならば中瀬に連絡を取って確認する事を伝えると、渋々だが九条が答えてくれた。
それなら初めから教えてくれたら良かったのに、と思わないでもなかったが、とにかくこれで全員分の土産物を確保出来た事になるが、やはり自分も欲しくなる。
「あの…、今度はあっちも見ませんか?」
遠慮がちに声を掛けると「好きにしろ」と返ってきたので、好きにさせてもらうことにする。
せっかく来たのに、菓子コーナーだけではもったいない。
先程より客も減り店内が歩きやすい為、祐羽はスムーズにお目当てのコーナーへと向かい辿り着いた。
そこで、さっそく視線をキョロキョロとさせる。
そこは雑貨コーナーで、ハンカチやタオル、可愛いカップやお皿が並んでいた。
その横に続くの文房具コーナーで、ところ狭しと品物が並べてある。
クリアファイルにボールペン、他にもノートからペンケースと様々だ。
使い勝手がいいのは、文房具だろう。
そんな色とりどりの文具に目移りしながら移動していくと、祐羽の心は浮き足立つ。
か、可愛い!!
そこには、海の生き物達がぬいぐるみとなって鎮座していた。
小さい物から大きな物まで。
いい年した高校生だが、ぬいぐるみには弱いのだ。
自分の部屋にもぬいぐるみが結構あったりする。
子どもの頃から好きで、亮介が買って来たりもするので男にしては多い方だ。
一時サヨナラしようとも思ったが、愛着もあったし、あの目で見つめられるとダメで結局ぬいぐるみと暮らしていた。
とはいえ、集めるのは辞めると決めたのに、こうしてついつい手に取ってしまう。
ペンギンやアザラシといった定番の物から、エイやサバといった面白い物まで幅広いラインナップだ。
そんな中で手に取ったのはシャチだ。
シャチのショーを見てはいないが、手にしたのには訳がある。
シャチが1番好きということもあるが、もうひとつ。
似てるんだよね…九条さん。
中くらいサイズのシャチを手にして、祐羽はシャチのぬいぐるみを見つめ、それから九条の無駄に整った顔を盗み見た。
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