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第305話 勝てない相手
「…ぉ。思ってません…」
「なら、大人しく外で待ってろ」
「わぁっ?!」
そう言って九条に方向転換させられ出入口へと背中を押された。
「く、九条さん…っ!!」
「何度も言わせるな」
肩越しに九条が少しだけ振り向いた。
「そんなに払いたいなら、今度出掛ける時までに小遣いでも貯めておけ」
それだけ言うと顎で外に出ておけと促される。
これ以上粘っても聞いてはくれないだろうし、機嫌を損ねてもいけないので、祐羽は渋々店の外へと出た。
そして側のベンチに腰を下ろす。
九条さんに勝てる気がしない…。
祐羽はほんの少し気落ちして、そっとひとつ溜め息をついた。
そうしてベンチに座って待っている間に周囲の人達をぼんやりと眺める。
ひとりで来ている人や友達同士は少ないようで 、家族連れが多く同じくらいに男女のカップルが居る。
土産物を売る店の隣がフードコートだが、先程までより人の数は減っていた。
食べ終わった客は残りのコーナーを見に行ったのだろうか。
「他にまだ見てないところって何処だっけ?」
祐羽は入館の時に貰っていたパンフレットを取り出すと、館内図を確認した。
あっ!そういえばまだペンギンとかトンネル水槽とか見てなかった。
「じゃぁこの後、こっち見に行こう…、わあっ?!!」
そう呟いたと同時に頭の上にボスンッと弾力のある物が落っこちてきた。
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