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第308話 感謝の気持ち
九条の返事を聞かないままに走り出した祐羽は、土産物コーナーへと逆戻りした。
そうだよ!僕も九条さんにお土産で何か買って渡せばいいんだよ。
「…でも何にしよう」
勢い込んで来たものの九条に何を渡せばいいのか、そこまで考えておらず雑貨コーナーの前で立ち止まった。
まさかお揃いのぬいぐるみとはいかず、ならば普段使える物の方がいいかと思ってみたが、あの高級感溢れる家具や食器類の中に置ける物はないもない。
タオル…いや、九条さんの家のタオルは質が違ったもんな。
悩むがこれ以上九条を待たせるのは不味い。
早く戻らなければと思うが、だからといって適当には選べない。
邪魔にならなくて、使える物で…。
祐羽は雑貨コーナーから文具コーナーへと移動していき、そこで目に入ってきた物を手に取った。
「あっ、これなら家で使ってもらえるかも!それに可愛いし」
結局自分の好みを取り入れた祐羽は、深く考える事はせずに幾つかを選ぶとレジへと向かった。
「九条さん…!お待たせしてすみません」
九条を待たせている場所へ慌てて戻ると、相手はベンチへ座る事なく立ったままこちらを見ていた。
走り寄って行くと「いや」と返してくれて、機嫌は悪くない事に安堵する。
良かった。これなら渡しやすいな。
出したところで、こんなもの…と受け取ってくれない可能性もある。
けれど、例えそうだとしても自分の感謝の気持ちが少しでも伝わる可能性があるのなら渡したい。
もしも受け取ってくれなかったら…いや、でも渡すって決めたんだから。
「あの、九条さん。これ…」
そう切り出し、祐羽は袋を両手で差し出した。
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