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第309話 海の仲間たち
差し出した物をじっと九条に見つめられて、戸惑う。
暫しの沈黙にこ一体どうしたらいいんだと、受け取って貰えないせいで手がプルプルしてしまう。
あぁっ、これ絶対に受け取って貰えない感じだ…。
そうなったら中身を見てしまったら益々嫌がられるに違いない。
「すみません、いらないですよねっ」
想像するだけで恐ろしいと、祐羽は慌てて差し出していた袋を引っ込めようとしたが、その手首を大きな手に直ぐ掴まれた。
その力強さに祐羽は驚き思わず顔を上げた。
「誰が要らないと言った」
そう言うと祐羽の持っていた袋をふんだくると、さっそく中身の確認に取り掛かり始めた。
「あぁぁあのっ、九条さん!中身大した物じゃないんです。ごめんなさい…」
受け取ってくれたはいいが、九条が袋の中身を見てガッカリする姿が浮かび、前もって伝えておこうと思った。
九条から最悪な言葉が発せられる事を想像しておけばショックも少ない。
そんな祐羽の放った言葉を聞いているのかいないのか、中からそれを取り出した九条は手にした物を見たまま固まった。
や、やっぱり失敗だ!
そんな気はしたけど、他に思いつかなかったし、それにお手軽な値段で使える物でピンときたのがそれだったんだもん!
九条の手には3本のボールペン。
ペンのてっぺんにはイルカ、くじら、ペンギンと可愛いくデフォルメされた海の仲間のマスコットがついていた。
スーツを完璧に着こなした九条が可愛いボールペンを持って立っている姿は、こうして改めて見ると選んだ祐羽でも(失敗だった)と思わずにはいられないものだった。
「…ごめんなさい。センスなくて」
大人の男、しかもヤクザ稼業の九条に選んでいいものではなかったのは確実だ。
ぬいぐるみを買って貰ったお返しにと考えて、今日のイルカショーで九条も楽しんでくれていたから丁度いいと思いイルカのボールペンを選んだ。
1本では寂しいとらお手頃価格だし並べると可愛いからと3本買ったものの九条のお気には召さなかった様だ。
それはそうだよね…。
「顔を上げろ」
シュンと再び顔を落として己の浅はかさに後悔していた祐羽は、その声に申し訳ないと眉を寄せたままそろりと視線を向けた。
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