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第310話 3本のペン

祐羽が顔を上げると九条がボールペンを眺めながらフッと笑う。 あ。九条さん笑った…。 九条の珍しい顔にポカンとしてしまう。 皮肉気に笑ったり、笑ったのかどうか微妙な表情はよく見るが明らかに楽しそうに頬笑む様子は初めてだった。 なので、不躾な程に凝視してしまう。 九条さんもこんな風に笑うんだ…。 「こういうのは、なかなか買うことがないからな。面白くていい」 「そ、そうですか?」 少し惚けてしまっていた祐羽は、九条の声に我に返ると慌てて返事をした。 「ああ」 今度は祐羽に視線を向けて頷いてくれる。 その目の優しい光と声に胸がキュッと締め付けられた。 たったそれだけの事なのに、嬉しくて涙が出そうだ。 気持ちが伝わったのだと実感出来る。 「イルカを見ればこの日を思い出すだろう」 そう行ってイルカのついたボールペンを示す。 それからクジラを手にすると、おなじようにして反対の手に持ち直す。 「コイツはデカイからな。もってればデカイ仕事も軽くこなせそうだ」 「…っ」 そんな気持ちの持ちようをわざわざ理由づけしてくれる九条の優しさが心に沁み入ってくる。 なんて素敵な人だろうか。 自分の買った安くて子どもっぽいお土産をこうして喜んでくれるのだから。 そして九条は最後の1本を手にした。 「そしてコイツは…」 デフォルメされた愛嬌のあるペンギンの顔を見てから祐羽へと向けた。 「この惚けた顔がお前に似てるな」 「えぇっ?!!」 まさか自分に似てると言われるとは思ってもおらず、予想外の発言に思わず驚きに今度こそ声が出た。

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