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第327話 わくわくセット

そうしてワクワクしながら取り出してみた中身はというと、子ども心を擽るちょっとしたセットだった。 「九条さんっ、こんなのが入ってましたよ!」 中にあったのは今後の予定が書かれた案内のフライヤー、ぬりえ、次回使える割り引きクーポン、そしてミニタオルだった。 取り出したミニタオルには水族館のロゴと、それを囲むイルカやペンギンなどの可愛いイラストが描かれている。 「プレゼントなのにタオルとか、豪華ですね…タダで大丈夫なのかな?」 嬉しい気持ちと何だか申し訳なさも沸き起こる。 けれど九条はシラッと事も無げに言った。 「そういう物は1度に大量生産すれば単価が下がるものだ。それに安心しろ。ナイトタイムは入館料が昼間より上がっている分、それで十分賄える程度のオマケだ」 「え。そういう物なんですか?」 全く未知の事に、祐羽は目を瞬かせた。 九条さんって何でも知ってそう…凄いなぁ~。 「それくらい知らなくて会社経営なんて出来るわけがないだろう」 「うっ、そうですよね」 呆れ半分の九条に言われて、祐羽は自分の無知さに苦笑いを浮かべるしかなかった。 しかし気を取り直して、九条に改めて提案してみる。 「あのっ、ところで九条さん」 「?」 「これ、タオル使いますか?」 そう差し出したタオルを一瞥すると「使うわけないだろう」と白けた視線を向けられてしまう。 バカかお前は、と確実に目が語っている。 そうだよね。 九条さんがこんな可愛いいタオルを使うはずないか…。 「…あっ、それじゃぁ中瀬さんにあげてもいいですか?」 タオルを袋に片づけながら、頭に浮かんだ名前を咄嗟に上げた。 自分が2つも貰うのは憚られるが、九条の関係者に渡すならいいだろう。 「好きにしろ」 「そうします!」 中瀬もきっと「いらない」と言うだろうが、祐羽はそんな事を思いもせず、ぬいぐるみとは反対側へ袋をしっかりと持ち直した。 中瀬さん喜んでくれるかなぁ? 渡した時の反応を想像して、自然と口がニンマリとなる。 祐羽の想像した中瀬も同じ様にニコニコしていた。

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