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第328話 贈呈

「社長」 水族館から出て直ぐに掛けられたその声に、祐羽はビクッとあからさまに驚いた。 もしも祐羽が猫だったなら毛を逆立てていた位に驚いた。 近くのフードコートに居てゆっくりしていると思っていた眞山と中瀬が直ぐ横から現れた。 そこに立つ眞山に隙はない。 どうやら少し前から水族館の横で待っていた様だが、ゆっくり出来たのだろうか?と祐羽は少し心配に思った。 「ゆっくりできたか?」 「はい。休憩させて頂きました」 斜めに頭を下げて礼を言った眞山は「お持ちします」とすかさず九条の荷物を受け取ると、それを中瀬が直ぐ様引き受けた。 その様子を見終わると、祐羽は今が話せるチャンスだと、おずおずとして声を掛けた。 「あのっ、…長い時間待って貰ってすみませんでした」 きっと待つ間はつまらなかったに違いない。 祐羽が申し訳なく謝ると、眞山は「却って休憩頂けましたので、ありがとうございます」と答えた。 そう言って貰えると気も楽になる。 ホッとした祐羽は、後ろに控えている中瀬の姿を見てハッと思い出した。 「あっ、そうだった!え~っと、これ。水族館で貰ったんですけど、中瀬さんに」 そう言って差し出したのは例の粗品の袋だ。 「えっ?!俺に?」 いきなり差し出された中瀬は驚きに目を丸めた。 「貰っておけ、中瀬」 「はい」 眞山に言われて素直に返事をした中瀬は、差し出された袋を遠慮がちに受け取った。

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