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第338話 評価
九条に対して、初めて会った時のイメージが尽 く崩れていく。
あれだけ怖いと思っていたのに今はその欠片も見えない。
逆に言うと、優しい上に良くして貰いすぎて申し訳なささえ感じる程だ。
黙々と箸を動かす九条の顔をついつい盗み見してしまう。
本当にイケメンだよね。
イケメンというか、男前?
大人の男の人って感じだし、雰囲気が独特で緊張しちゃう。
やっぱりヤクザの組長だからかな?
そこで祐羽は自分の考えに気がつき頭を振った。
ヤクザだからって決めつけちゃ駄目だった。
九条さんが悪い事してる所、見たことないし。
人を見た目で判断しては駄目だと教わったではないか。
実際、九条を始め、眞山と中瀬も優しくしてくれている。
これでもしも九条が悪事を働いていたら…?
自分はどう思うんだろうか?
その場面に出会ってないのだから仮定の話などしても意味はない。
だからといって、それが実際に九条自身への自分の評価へ影響が及ぶのかと言われれば疑問だ。
九条さん自身を僕は悪い人だと断言出来ない気がする…。
そう決めつける材料が殆ど無いからだ。
考えたところで今はそれよりも、先程の九条が然り気無く示してくれた優しさの方が大きく祐羽の心を支配していたのは言うまでもなく…。
「おい。口に合わないか?」
そんな事を考えていたせいで、すっかり手の止まっていた祐羽に九条が訊いてきた。
言われてはじめて自分が全く食事が進んでいない事に気がつき慌てて背筋を伸ばした。
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